2007年2月28日水曜日

ケアを受ける人の心を理解するために

2月27日 高崎健康福祉大学 渡辺俊之先生の講演に参加させていただきました。
タイトルは「ケアを受ける人の心を理解するために」
渡辺先生は、精神科医の立場から、介護される側や介護者の心理という研究をされております。精神科領域では渡辺先生のような研究をされている方はほとんどおられないようです。

今回は神経難病関連の研究会であったため、難病患者の心理状態の変化、介護による患者心理、介護者である家族の問題など非常に現実的な内容を分かり易くお話していただきました。特に介護を受ける人は「退行」と言う現象が起こり、これまでの人生で良いケアを受けてきた人は介護者に陽性(良い)の感情を、満足したケアを受けてこなかった人は介護者に陽性の感情がわかないようです。上手に甘えることが出来る人は上手に介護されることが出来る、と言った意味でしょう。
また、患者・介護者の感情の「転移」についてもお話されました。
そして家族の問題として、介護は家族の構造を変化させると題する中で、どこまでが介護機能しうる家族か?問題の所在は?問題を誰が一番良く整理しているか?家族のゴールは?などと言った問題を挙げ、さらに時期により家族介護形態が変化していくことを実体験より解説されました。

介護者である家族の問題は、神経難病の診療の中では重要な位置を占めております。キーパーソンを軸に介護形態を考えていく、そして家族全員で協力し合いながら介護体制を構築して行くことは必須であると思います。

研究会の後、有志による渡辺先生を囲む会に参加させていただきました。
非常にユニークな先生で楽しい時間を過ごさせて頂きました。

★渡辺俊之先生のホームページ
 
★著書
介護者と家族の心のケア―介護家族カウンセリングの理論と実践
ケアを受ける人の心を理解するために
この著書の中で先生は、介護される側の心理としての屈辱感の存在について述べられており、非常に考えていかなければならない問題であると思います。
ケアの心理学―癒しとささえの心をさがして

2007年2月18日日曜日

西日本パーキンソン病学術講演会

昨日、香川県立中央病院神経内科 山本光利先生の公演に参加させていただきました。
タイトルは「パーキンソン病の薬物療法におけるリスクとベネフィット」

今回の講演は、パーキンソン病治療薬の中でもドーパミン受容体刺激薬(Dopamin agonist)に関するお話でありました。山本先生は、これまでもパーキンソン病に関する数多くの著書を出版しておられ、最近ではドパミンアゴニストと心臓弁膜症に関する論文をNeurology誌に発表されておられますNeurology 67:1225-1229, 2006。今回の講演はその内容から、下記のテーマを中心にドーパミン受容体刺激薬の使い方をかいつまんで説明していただき、非常に勉強になりました。

・Dopamin agonist(DA)の長期投与の問題
・DAは精神症状が多いか?
・Fibrosisは麦角系DAに特有の症状か?
・DAで治療するとジスキネジアは起きないのか?

麦角系ドパミン受容体作動薬の長期投与による心臓弁膜症は問題になっており、今後はその投与量などが検証されていくのでしょう。
麦角系アゴニストによる弁膜症の機序は、明らかではありませんが、5-HT2B受容体との親和性がfibrosisに関与している可能性が示唆されているようです。(5-HT2B受容体はセロトニン受容体の一種で、心臓弁に豊富に存在し、正常な心臓の発達に不可欠な受容体と言われているそうです)

※参考
麦角系;カバサール,ペルマックス,ブロモクリプチン
非麦角系;ビ・シフロール,レキップ、ドミン

山本先生の著書
パーキンソン病―認知と精神医学的側面 (単行本)
パーキンソン病治療ハンドブック (単行本)
患者と家族のためのパーキンソン病Q&A (単行本)
パーキンソン病―病理学,自律神経系研究の進歩
など

2007年2月16日金曜日

ALSの受験生

呼吸器つけ、大学院受験 難病に負けず団塊の挑戦
記事:共同通信社 提供:共同通信社 より
【2007年2月16日】
 進行性の難病、筋委縮性側索硬化症(ALS)で手足が全く動かず、人工呼吸器をつけている東京都府中市の佐々木公一(ささき・こういち)さん(59)が16日、東海大伊勢原キャンパス(神奈川県伊勢原市)で大学院健康科学研究科を受験した。文字盤のひらがなを目線で示し、介助者が読み取る解答方法を大学側が認めた。患者団体の日本ALS協会によると、呼吸器をつけたALS患者の受験は前例がないという。「生きることは可能性に挑むこと」。団塊世代の挑戦でもある。佐々木さんが発症したのは約10年前。足がもつれて転び、前歯を折るなどけがが絶えなかった時期は「みじめで、人に会いたくなかった」という。呼吸器装着と喉頭(こうとう)摘出を決断した時、声を失う恐怖に号泣した。前向きに生きようと思えたのは、ほかのALS患者と交流してから。昨年11月、ALS患者や家族の体験をまとめて出版した本「生きる力」(岩波書店)の中で、佐々木さんは「どんな難病でも人間らしく生きられる。社会に貢献できる。必要な環境を社会が整えられれば」とつづった。受験科目は、記述式の論文読解や面接など。大学側は試験時間を各科目とも通常より1.5?2倍に延長。妻節子(せつこ)さん(57)と介助者2人が文字盤を読み取り解答用紙に記入することを認めた。合格すれば車で往復3時間かけ、車いすで通学するつもりだ。佐々木さんは「障害者福祉を専攻して、障害者が尊重される社会を目指したい」と意気込んでいる。
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ALSの患者さんでも目的をもった方は、病気の進行が遅いように感じます。
がんばって他の患者さんに勇気を与えていただきたいと思います。

パーキンソン病発症抑制たんぱく質

(2007年2月16日 読売新聞)より
パーキンソン病発症抑制たんぱく質特定…京大グループ
 脳の神経細胞に多く含まれるたんぱく質がパーキンソン病の発症を抑えていることを、京都大医学研究科の木下専(まこと)・助教授らのグループがマウスの実験で突き止めた。パーキンソン病の患者では、このたんぱく質が欠乏していることも確認しており、詳しい発症メカニズムの解明につながるという。15日の 米科学誌「ニューロン」(電子版)に掲載された。
 パーキンソン病は、神経細胞内にある「α―シヌクレイン」というたんぱく質が大量に蓄積して発症するとされる。木下助教授らは、α―シヌクレインとともに多く見つかる「セプト4」というたんぱく質に注目。これまで、これが増えるとパーキンソン病が進行すると考えられていたが、患者の脳を調べたところ、逆に正常の人と比べ欠乏していることがわかった。
 セプト4をつくらないようマウスの遺伝子を操作して観察した結果、正常なマウスより3か月ほど、病気の進行が早くなった。正常な状態では、セプト4はα―シヌクレインと結合して蓄積を防いでいるらしい。

 Ihara et al. Neuron, Vol 53, 519-533, 15 February 2007

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パーキンソン病などの神経変性疾患では、異常な蛋白質が神経細胞内に凝集して、それが神経細胞に悪さをするといわれています。蛋白質に違いはあれ、ALSやハンチントン病、脊髄小脳変性症などさまざまな病気でこの異常蛋白質の凝集が問題になっています。α―シヌクレインやタウ蛋白など蓄積する蛋白質のなかでその性質が分かっているものもあり、この異常蓄積のメカニズムを解明することが治療法の開発に結びつくものと考えられ、研究が進められております。
Sept4と言う蛋白質がパーキンソン病の治療を発展させることを期待したいものです。

★パーキンソン病関連サイト
全国パーキンソン病友の会
パーキンソン病(難病情報センター)
Parkinsons.co.jp

2007年2月13日火曜日

HTLV-1関連ミエロパチー

国主導で研究、救済を 指定求めるHAM患者会
記事:共同通信社 提供:共同通信社 より
【2007年2月13日】
 原因が分からず、治療法も確立していない病気は多く、患者・家族の精神的、経済的な負担は重い。厚生労働省は重症筋無力症など121の難治性疾患(難病)を「特定疾患」に指定、うち45疾患を医療費補助の対象としている。国の医療費抑制策の中で、患者の支援や新たに難病指定する基準をどうするかなど、難病対策の課題が指摘されている。「畳のへりにもつまずいて転ぶ。大腿(だいたい)骨や肋骨(ろっこつ)を折り、体中けがをしました」。菅付加代子(すがつき・かよこ)さん(49)=鹿児島市=は、33歳のとき「HTLV1関連脊髄(せきずい)症(HAM)」と診断された。HAMは発症すると足のしびれや痛み、歩行障害や排尿障害などの症状が進行し、患者の多くは車いす、寝たきりの生活を強いられる。菅付さんは2003年に患者団体「アトムの会」を設立し、国にHAMの難病指定を求めている。HTLV1ウイルスがHAMの原因であることは、1986年に鹿児島大の納光弘(おさめ・みつひろ)教授らが発見した。国内のHTLV1感染者は120万人以上と推定され、南九州、沖縄に多い。HAMは年間に感染者10万人に3人の割合で発症し、患者数は約1500人とされている。菅付さんはHTLV1の輸血感染防止対策がなかった70年代に、貧血治療で受けた輸血によってウイルスに感染した。HAMの症状は徐々に進み、今は松葉づえが欠かせない。「人生が突然裏返るような体験で若い人が苦しんでほしくない。難病に指定し、国が主導して治療法の研究を進めてほしい」という。30万人近い署名を集め、04年から厚労省、国会への陳情、請願を行っている。しかし、厚労省は当初「原因がウイルスと分かっており、指定できない」と回答した。
難病指定には条件がある。(1)患者数が少なく(おおむね5万人未満)、公的支援がないと研究が進まない(2)原因が不明(3)治療法が確立していない(4)長期の治療が必要で生活面への支障が大きい?という4要件だ。
 HAMは「原因不明」以外の要件は満たしている。菅付さんは「原因が分かっていても治療法がなければ、患者の苦しみは同じ」と話す。一方で指定された難病には、パーキンソン病など患者数が5万人を上回る疾患がある。厚労省には、HAM以外にも、筋肉などが骨に変化して動きの自由を奪われる「進行性化骨筋炎(FOP)」など、10以上の疾患について難病指定の要望書が提出されている。

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排尿障害や足のツッパリのある方は、HAM(HTLV-1関連ミエロパチー)も鑑別に挙がります。壱岐や対馬などの患者様を良く見かけます。まだ難病指定を受けていないようですので今後の患者活動が期待されます。

アロママッサージ

病棟看護師 SNさんのコメント
本日ALSの患者さんにアロママッサージをしました。
その後NIPPVをすると非常に調子がよく、本人も快適であったようです。
やはり、難病の診療には医療だけではなく癒しの空間が必要ですね。

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とのことです。

ちなみにこんな本もありました。
匂いが難病を治す―アロマセラピーの神秘
嗅覚への心地よい刺激は、五感の中でも最も生命の奥深いところへの刺激となる。心地よい匂いを嗅ぐだけで病は癒されることがある。

だそうです。

2007年2月12日月曜日

在宅看護の条件

 神経難病の在宅介護は、本人のみならず家族・介護者による十分なサポート体制が必要であります。

 神経難病の在宅介護には以下の条件が必要と考えられています。

 *患者が在宅を望む
 *家族が在宅を望む
 *患者が自分の病気を理解している
 *特定の介護者の存在
 *複数の介護者の存在
 *簡単な対症療法が可能(処置:吸引など)
 *在宅訪問看護、訪問リハビリテーション
 *往診医の存在
 *入院可能な後方支援病院の存在

2007年2月11日日曜日

ALSのケア

筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis,ALS)は神経難病の中でも最も問題となる病気であります。ALSは、運動神経に限局した神経障害を引き起こし、全身の筋肉が麻痺していきます。
ALSは、罹患率は10万人に2-6人の割合で、40歳以上で、男性にやや多いとされています。一般的な死因は呼吸困難で、生存期間は、平均3~5年と言われていますが、進行は患者さんによってさまざまであり、進行が緩徐なケースも見られます。ALSは神経難病の中でも最も総合的なケアが必要な疾患であります。

ALSケアの基本概念 (H.Mitsumoto et al.)
1. ケアは患者の意思決定に応じての提供。
2. 神経内科医の十分な理解が必要
3. 神経内科医はALS患者ケアに関し献身性が必要。
4. 包括的なケアが必要。
5. 積極的な対症療法を行う。
6. 臨床治験への参加
7. 効果的な在宅介護とホスピスケア
8. 患者・介護者・コーディネーターの緊密な連帯が必要。
9. 病状の進行に関して常に検討する。
10.終末期における緩和ケア。

ALSのケアには以下のような多専門職種によるチーム医療が必要です。

ALSクリニックの理想的メンバー
       (コロンビア大学ALSセンタースタッフ)
・ALSナースコーディネーター
・ALS専門医
・理学療法士
・作業療法士
・栄養士
・言語聴覚士
・ソーシャルワーカー
・精神科医または心理療法士
・呼吸器科医
・消化器科医
・器具・装具士

*米国・コロンビア大学神経内科のMDA/ALSセンターPrzedborski研究室)に留学しておりました。研究に明け暮れる毎日でしたが、センター長の三本博教授(ALSのケアに関する世界の第一人者)からは神経難病の診療姿勢に関しても多くのことを学ばせていただきました。米国の医療システムは日本と大きく違いますが、良い点や悪い点を含め学ぶべき事は多いと思います。特に米国のALSセンターにはALS専門看護師がいて、彼女(彼)らがチーム医療における多専門職種のとりまとめを行っております。神経難病診療の場合、専門看護師の存在は重要であると思います。
参:★米国におけるメンタルサポートの現状

ALSのケアに関する参考図書
1.新ALSケアブック 
2.Amyotrophic Lateral Sclerosis (Neurological Disease and Therapy)  
3.Amyotrophic Lateral Sclerosis: A Guide for Patients and Families
4.Palliative Care in Amyotrophic Lateral Sclerosis: From Diagnosis to Bereavement

参考サイト
日本神経学会ALS治療ガイドライン
ALS/LIVE TODAY FOR TOMORROW(ALS情報サイト)

2007年2月10日土曜日

NIPPV療法

神経難病の患者さんは、呼吸状態が悪化し、人工呼吸器が必要になることもあります。
最近では、NIPPV療法(Non-invasive Positive Pressure Ventilation)という非侵襲的陽圧換気法が普及しており、挿管をしない呼吸サポート法も可能になってきております。
当院でも以下の機器を用いて神経疾患患者さんのNIPPV療法を施行しております。
INTEGRA
ULTRA
SERENA
NIP NASAL

研究会の案内

★第4回日本難病医療ネットワーク研究会

 平成19年10月6日(土)、7日(日)
 場 所 別府ビーコンプラザ (大分県別府市山の手町 12-1)

ALSの治験

当科ではALSの治験を行っております。

2007年2月9日金曜日

当院設置検査機器

当院には神経疾患の検査目的のため最新の診療機器を導入しております。

★筋電図・神経伝導速度検査
Neuropack MEP-9204 


神経伝導速度検査の実際







★デジタル脳波計
Neurofax EEG-1514









★MRI
HITACHI APERT INSPIRE






★CT
東芝Asteion

2007年2月8日木曜日

神経内科で取り扱う疾患

神経内科では、頭痛、めまい、ふらつき、手足のしびれ、つっぱり、痙攣、運動異常、運動麻痺、感覚障害、物忘れ、不随意運動など、神経・筋肉の障害によって引き起こされるさまざまな疾患の診療を行います。

主な対象疾患
1.脳血管障害:脳梗塞、脳出血など
2.変性疾患:認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症、ピック病、び慢性レヴィー小体病など)、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、大脳皮質基底核変性症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症など
3.炎症性疾患:髄膜炎、脳炎、神経梅毒、プリオン病など
4.脱髄性疾患:多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、急性小脳炎、横断性脊髄炎など
5.中毒性疾患:薬物中毒、有機物質による中毒、一酸化炭素中毒、SMON
6.内科疾患に伴う神経障害:ビタミン欠乏症、内分泌疾患(甲状腺疾患、糖尿病など)、肝性脳症、肺性脳症、血液疾患(Crow-Fukase症候群など)、膠原病(SLE、シェーグレン症候群など)、神経Behcet病、傍腫瘍性症候群(辺縁系脳炎など)
7.筋疾患:多発筋炎、皮膚筋炎、筋ジストロフィー、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、筋痙攣
8.末梢神経障害:ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、Charcot-Marie-Tooth病、手根管症候群など
9.脊椎疾患:椎間板ヘルニア、後縦靱帯骨化症、脊柱管狭窄症
10.代謝性疾患:ミトコンドリア異常症、アミロイドーシス、ウィルソン病など
11.その他:てんかん、頭痛など

2007年2月7日水曜日

合同勉強会

平成19年2月6日
福岡市内で神経難病の診療を積極的に行っている3病院(栄光病院原病院村上華林堂病院)の合同勉強会が行われました。
当初20人程度の参加予定でありましたが50人ほど集まり、大変盛況でありました。当院からはリハビリテーション部からの多数の参加がありました。
今回は講演形式で、内容は、3病院の各施設の紹介、原病院理学療法士 園田義顕先生の「身体スキーマを意識した訓練戦略」、栄光病院神経内科 野村拓夫先生の「パーキンソン病の臨床」
でありました.このような交流会は大切と思われます.回を重ねてさらに病院間交流が出来るようにしていきたいと思います。 

多専門職種によるチーム医療


当院では神経難病患者様に対して、以下の多専門職種によるチーム医療を行っております。
神経難病疾患のケアのためには、パラメディカルを中心としたチーム医療が必須であり、看護師のみならずリハビリテーションスタッフ、MSW、訪問看護スタッフなど多職種スタッフの理解が必要であります。

神経難病ケアスタッフ
神経内科医師 ・病棟看護師・訪問看護ステーション・リハビリテーション(PT、OT、ST)・介護部門・ソーシャルワーカー・栄養士・臨床心理士・薬剤師

毎週1回上記スタッフが全員で集まって入院患者に関するミーティングを行うことで、患者様の全体像を把握し、総合的なケアが出来るようにしております。(当院では、障害者等一般病棟である3階病棟を中心として神経難病の診療を行っております。)

院内医療スタッフとの連携
当院では他の医療スタッフとともにより効率的な診療が出来るように以下のようなチーム医療を行っています。
★メンタルサポートに関しては、臨床心理士、STと共に定量的心理評価、高次脳機能評価機能評価、心理カウンセリング.
★呼吸障害に関しては、呼吸器内科医と共にPSG検査、NIPPVの導入などの呼吸器管理
★嚥下障害に関しては、言語療法士と共に食道造影を用いた嚥下機能検査とそれに準じた食種の選定と嚥下リハを行う.消化器外科医による胃ろう造設.
★運動機能障害に関しては、作業療法士、理学療法士、整形外科医と共に関節拘縮などに対する対症療法.
★視力障害に対しては、眼科医と共に原因精査、加療.

その他の診療科に関しても院外の診療施設との連携を図りながら円滑な医療を推進出来るようにしております。

当科の診療コンセプト

当科では多専門職によるチーム医療を基本にして
神経難病患者様の在宅療養を支援することを目標とし
以下のコンセプトに基づく診療を行っております。

1.神経難病患者は、医療行為だけでは多くの問題は解決できない ため、心理的
  社会的サポートを固めるべく多職種間でのチーム 医療を進めていく。

2.初期診療から病状の進行過程に関わる事で、患者さんの人間性や心理状態を
  把握し、メンタルサポート・リハビリテーションを通してADLやQOLの向上に
  努める。

3.可能な限り在宅への復帰を目指し、家族と一体になったサポート体制を構築す  る。

4.在宅診療を中心とした長期療養を行いながら可能な限り末期まで診療する。

5.介護者の負担軽減も考えたレスパイトケアやメンタルサポートを推進する。

6.医療スタッフへの過剰負担の軽減に努め無理のないサポート体制を推進する

レスパイトケア:患者様を一時的に病院に受け入れて、家族などの介護者に一時的な解放を与えると同時に患者様に必要なケアを提供すること。


当院での神経難病患者の診療の流れ
1.大学病院や基幹病院、近隣の病院からの紹介を受けた場合、ソーシャルワーカー(MSW)・医師により対応し、受診の調整を行います。

2.その後、本人・家族(場合によっては家族のみ)に受診していただきます。
診察および医師・病棟看護師長・MSWを交えた面接を行い、この最初の面接過程で将来的な方向性を十分話し合います。面接後、病院見学をしていただきます。

3.入院後は、治療・リハビリテーション・メンタルケアおよびMSWによる退院後施設、訪問看護ステーション・往診医の確保を行い、さらに家屋調査による在宅療養環境の改善を行います。

4.退院後は、プライマリケア、リハビリやレスパイトケアのための入院などを交えながら在宅療養を支えていきます。

村上華林堂病院神経内科について

神経難病の患者様と言うのは、一般病院ではなかなか受け入れられにくい状況があり、福岡市でも神経内科を専門にし神経難病を中心とした診療を行っている病院は数少ないと思われます。

当院では、神経疾患全般の診療は当然のことながら、神経難病の患者様の早期から末永く関わる事で、医療のみならずメンタルサポート、リハビリテーション、社会的サポートに至るまで、多専門職種によるチーム医療を通して、在宅療養を視野に入れた総合的なケアを目指しております。


※難病とは、昭和47年の難病対策要綱の定義では(1) 原因不明、治療方針未確定であり、かつ、後遺症を残す恐れが少なくない疾病  (2) 経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病
とされております。中でも神経難病とは筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、多発性硬化症などの難治性神経疾患を示します。