2010年10月3日日曜日

第7回日本難病医療ネットワーク研究会

2010年10月1-2日 第7回日本難病医療ネットワーク研究会が神奈川県民ホール(横浜市)で開催(大会長 北里大学神経内科 荻野美恵子先生)

当院より以下の2演題を報告。ランチョンセミナーで講演もさせていただきました。
今回の研究会のテーマは「難病のショートステイ」および「生命倫理」が中心でありました。
演者の皆様、ご苦労様でした。そして荻野大会長先生大変お疲れ様でした。

演題抄録
1.当院で作成した神経難病患者情報提供書の連携に対する有用性と必要性
山本知佳1)、北野晃祐1)、福崎逸美1)、今村怜子1)、深川知栄2)、田代博史3)、菊池仁志3)
1)村上華林堂病院 リハビリテーション科  2)同 看護部  3)同 神経内科
【背景】当院は、昨年の本研究会において「神経難病診療における職種・施設間連携に関するアンケート調査」の報告を行い、多職種が共有し記入する患者情報提供書を作成した。患者情報提供書を有効活用することで、多施設および多職種間における情報共有を可能にし、より円滑な神経難病連携ができる事が期待される。
【目的】当院および連携施設スタッフに対してアンケート調査を実施し、作成した情報提供書の連携に対する有用性と必要性を検討した。
【対象・方法】H22年3月より当院から退(転)院する神経難病患者を対象に情報提供書の使用を開始し、提供先の連携施設・事業所(以下、連携先)に対しても同書式による情報提供を依頼した。アンケート調査は、患者情報提供書を使用した当院スタッフ(看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカー)44名に留置調査法により実施し、外部18施設は郵送調査法にて実施した。調査内容は前者に①職種、神経筋疾患に係る経験年数②使用・便宜性③他職種と情報共有が出来たか④必要と思われる項目・不必要と思われる項目⑤情報提供書の必要性⑥今後も使用したいか⑦他施設と情報共有ができたかの全7項目。後者に①、④、⑤、⑥、⑦に加え、⑧連携に際して同書式を使用したかの全6項目とした。①は自由回答、②は「良い」「良くない」「どちらでもない」、③⑤⑥⑦は「はい」「いいえ」「どちらでもない」、⑧は「はい」「いいえ」の単一回答、④は「発症日」「重症度」「患者・キーパーソンの情報」「コミュニケーション方法」「身体機能(呼吸機能・摂食機能・上肢機能・下肢機能・自律神経・高次脳機能)」「基本動作」「ADL」「経過」「次回診察・入院予定日」「コメント欄」の情報提供書内にある項目から複数回答とした。その他意見として自由回答欄を設けた。
【結果】回答は当院43名(NS.19名、PT14名、OT6名、ST3名、MSW1名)より回答率97.7%。連携先は9施設(Ns.9名、OT1名、CM13名、計23名)より回答率50%。当院では設問②⑤(72%)⑥(69.8%)③(65.1%)⑦(56.3%)、連携先は設問⑤(95.7%)⑧(85.3%)⑥(73.9%)⑦(56.5%)の順に全て肯定的な回答を示され、いずれも情報提供書の必要性が望まれる結果となった。設問④ではADL(90.9%)が最も高く、重症度(59.1%)が最も低かった。自由回答欄では、院内から「他職種の評価や考え方が分かった、患者把握がしやすい」、連携先からは「関わる以前の情報が把握できた」「居宅サービス計画書の作成・アセスメントへ活用している」等の意見を得た。
【考察】アンケート調査結果では、全ての設問において情報提供書に関する肯定的な回答が過半数を超え、情報提供書が一定の評価を得たと考えられる。その中で、当院・連携先共に最も肯定的な回答率が低かったのは、他施設との情報共有に対する設問であった。これは情報提供書の使用が連携先まで浸透しておらず、連携パスとしての機能が成されていない可能性が考えられる。しかし、自由回答欄において、連携先より複数挙げられた情報提供書の活用意見は、情報提供書が連携手段として有用であることを示唆している。情報提供書の必要性に対する設問は、当院・連携先ともに肯定的な回答率が最も高く、多施設・多職種が共有する情報提供書のニーズは高い。今後は継続して情報提供書を使用し、地域連携パスと同様に多施設間の連携手段として定着させていくことが重要と考えている。

2.当院における定期レスパイト入院の有効性の検証
~多次元介護負担尺度(BIC-11)を使用して~
○深川 知栄1 森山千恵子1 田代英子1 上原奈緒1 吉岡朋子1 原田幸子2 菊池仁志3       医療法人財団華林会 村上華林堂病院 看護部1  MSW2  神経内科医3
【背景】レスパイト入院は、一時的に神経難病患者さんに短期入院していただくことで介護者の介護負担軽減を可能とする。最近では、レスパイト入院を積極的に施行する医療機関も出てきているが、その有効性に関しての客観的評価の報告は少ない。
【目的】当院では、神経難病病棟において3年前より難病患者の計画的定期レスパイト入院の受け入れを積極的に行っている。本研究では、当院が行っている計画的定期レスパイト入院における家族の介護負担感の軽減効果を検証する。
【方法】当院神経難病病棟に定期レスパイト入院中に難病患者のうち、平成21年7月8月に入院かつ次回入院が9月・10月の患者・家族で研究に同意取得し、入院中と自宅療養中の定期レスパイト入院患者の家族に、定期入院中の中間日と自宅療養中の中間日に、それぞれ患者属性・質問表・多次元介護負担尺度(BIC-11)を使用してのアンケート調査を施行した。
【結果】患者家族20名(患者18名)に調査施行。アンケートに答えてもらった家族の被介護者の状況は、レスパイト継続12名、レスパイト中止自宅介護1名、転院2名、死亡3名(平成22年8月現在)。
・疾患別ではALS6名・多系統委縮症3名・パーキンソン病4名・脊髄小脳変性症1名、多発性硬化症1名・進行性核上性麻痺1名・その他2名。
・BIC-11スコアは、40点満点で、高点数ほど、介護負担度が高くなる。本研究でのBIC-11スコア解析では、時間関連では「2.介護のために自由に外出できない」と思う人の割合が在宅介護中は「時々思う」までを合わせると95%。「2.介護をしていて何もかもいやになってしまう」と思う割合は、在宅35%・入院中10%「3.介護を誰かに任せてしまいたい」在宅40%入院中15%。「5.介護をしていてやりがいが感じられずつらい」と思う割合は、在宅60%入院中20%。「11.全体的にみて、介護は自分にとって負担である」の割合は少し負担までを合わせると自宅90%入院中80%となった。BIC-11のスコア総点数の分布は、10点未満:在宅10%未満、入院中15%。10点以上20点未満:在宅40%、入院中55%。20点以上30点未満:在宅45%、入院中10%であった。
・質問表の「次回の入院予定があると頑張れる」では、入院中・在宅どちらも、平均3点以上となった。
【結論】本研究より、計画的レスパイト入院においての主な利点は、レスパイト入院中は介護負担感が軽くなり、計画的な入院予定がある事で介護者が自宅介護を頑張ることができるという事が示された。

ランチョンセミナー(共催 サノフィアヴェンティス)
座長 国立病院機構箱根病院 副院長 小森哲夫先生

「在宅神経難病患者・家族への総合支援 -レスパイト入院を中心としてー」
     村上華林堂病院神経内科 菊池仁志