2007年2月11日日曜日

ALSのケア

筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis,ALS)は神経難病の中でも最も問題となる病気であります。ALSは、運動神経に限局した神経障害を引き起こし、全身の筋肉が麻痺していきます。
ALSは、罹患率は10万人に2-6人の割合で、40歳以上で、男性にやや多いとされています。一般的な死因は呼吸困難で、生存期間は、平均3~5年と言われていますが、進行は患者さんによってさまざまであり、進行が緩徐なケースも見られます。ALSは神経難病の中でも最も総合的なケアが必要な疾患であります。

ALSケアの基本概念 (H.Mitsumoto et al.)
1. ケアは患者の意思決定に応じての提供。
2. 神経内科医の十分な理解が必要
3. 神経内科医はALS患者ケアに関し献身性が必要。
4. 包括的なケアが必要。
5. 積極的な対症療法を行う。
6. 臨床治験への参加
7. 効果的な在宅介護とホスピスケア
8. 患者・介護者・コーディネーターの緊密な連帯が必要。
9. 病状の進行に関して常に検討する。
10.終末期における緩和ケア。

ALSのケアには以下のような多専門職種によるチーム医療が必要です。

ALSクリニックの理想的メンバー
       (コロンビア大学ALSセンタースタッフ)
・ALSナースコーディネーター
・ALS専門医
・理学療法士
・作業療法士
・栄養士
・言語聴覚士
・ソーシャルワーカー
・精神科医または心理療法士
・呼吸器科医
・消化器科医
・器具・装具士

*米国・コロンビア大学神経内科のMDA/ALSセンターPrzedborski研究室)に留学しておりました。研究に明け暮れる毎日でしたが、センター長の三本博教授(ALSのケアに関する世界の第一人者)からは神経難病の診療姿勢に関しても多くのことを学ばせていただきました。米国の医療システムは日本と大きく違いますが、良い点や悪い点を含め学ぶべき事は多いと思います。特に米国のALSセンターにはALS専門看護師がいて、彼女(彼)らがチーム医療における多専門職種のとりまとめを行っております。神経難病診療の場合、専門看護師の存在は重要であると思います。
参:★米国におけるメンタルサポートの現状

ALSのケアに関する参考図書
1.新ALSケアブック 
2.Amyotrophic Lateral Sclerosis (Neurological Disease and Therapy)  
3.Amyotrophic Lateral Sclerosis: A Guide for Patients and Families
4.Palliative Care in Amyotrophic Lateral Sclerosis: From Diagnosis to Bereavement

参考サイト
日本神経学会ALS治療ガイドライン
ALS/LIVE TODAY FOR TOMORROW(ALS情報サイト)