老人介護をモチーフにした小説は多いですが、久坂部羊の「廃用身」は異色で考えさせられます。
脳梗塞などで麻痺し、回復困難な手足を切断することで、体が軽くなり、介護負担軽減が図れ、本人のQOLも向上する。排泄処置の困難さを軽減するためにストーマを作る・・・
「廃用身」 Amazonより・・廃用身とは、麻痺して動かず回復しない手足をいう。漆原医師の究極の医療「Aケア」とはそれらを切断することだった・・「廃用身」とは、脳梗塞などの麻痺で動かなくなり、しかも回復の見込みのない手足のことをいう医学用語である。医師・漆原糾は、神戸で老人医療にあたっていた。心身ともに不自由な生活を送る老人たちと日々、接する彼は、“より良い介護とは何か”をいつも思い悩みながら、やがて画期的な療法「Aケア」を思いつく。漆原が医学的な効果を信じて老人患者に勧めるそれは、動かなくなった廃用身を切断(Amputation)するものだった。患者たちの同意を得て、つぎつぎに実践する漆原。が、やがてそれをマスコミがかぎつけ、当然、残酷でスキャンダラスな「老人虐待の大事件」と報道する。はたして漆原は悪魔なのか?それとも医療と老人と介護者に福音をもたらす奇跡の使者なのか?人間の誠実と残酷、理性と醜悪、情熱と逸脱を、迫真のリアリティで描き切った超問題作。******